かつてのインターネットには、色鮮やかな街がたくさんありました。
今、その街並みは音を立てずに、次々と姿を消しています。
ひとつの巨大なデジタルアーカイブが消滅する日

2025年6月30日『FC2WEB』の終了。
20年以上の歴史に幕が下ろされるという衝撃的なニュースで、SNS上では
「古の個人サイトが絶滅する」
「貴重な攻略情報や創作小説が消える」
といった悲鳴に近い声が相次ぎました。
消えゆくデジタルの足跡
私が学生時代、夢中で更新していたジオシティーズの映画レビューサイト。
日常を綴っていたLOVELOG。
当時はそれがあって当たり前なんだと思っていました。
現実は違い、無料サービスが次々と閉鎖されていく中、
私たちが目の当たりにしているのは、個人サイトという文化の消滅です。
サービス終了の事例
個人サイトから、携帯電話でwebサイト閲覧ができる時代からブログの流行もあり、急速に増加し発展した掲示板文化、ブログ文化、まとめ文化などを支えたサービスが、次々と終わりを迎えています。
| サービス名 | 開始 | 終了 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Yahoo! ジオシティーズ | 1997年 | 2019年3月 | 個人ホームページの代名詞。 キリ番、BBS、隠しリンクなど、00年代までのネット文化の象徴。 |
| LOVELOG | 2004年 | 2014年3月 | KDDI(au)が提供。 モバイルからも更新しやすく、日常を綴るブログとして親しまれた。 |
| 前略プロフィール | 2002年 | 2016年9月 | 「前プロフ」は学生たちの名刺代わり。 短い質問に答える形式で、当時の若者のリアルが詰まっていた。 |
| 魔法のiらんど(HP機能) | 1999年 | 2020年3月 | ケータイ小説の聖地。 独自の「ホムペ」文化があり、キラキラした装飾や独特の言葉遣いが特徴的。 |
| NAVERまとめ | 2009年 | 2020年9月 | 特定のテーマの情報を集積。 個人のニッチな熱量が「まとめ」という形で可視化されていた。 |
| 忍者ツールズ(一部機能) | 2002年 | 2021年3月 | 「忍者カウンター」など個人サイトの訪問者数を確認するツール。 終了によりキリ番文化が実質的に消滅。 |
| FC2WEB | 1999年 | 2025年6月 | 長らく個人サイトを支えてきた老舗。 一つの巨大なアーカイブが消える。 |
デジタルデータは紙と違って、あえて残そうという強い意志がなければ、
サーバーが止まった瞬間に、この世界から最初からなかったことになってしまいます。
忘れられないあの頃の 個人サイト交流文化

もし今も残っていたら……と思わずにはいられない、
当時の温かな個人サイト文化があります。
1. カウンターとキリ番
サイトを訪れると回る数字。
ゾロ目や節目の数字を踏む「キリ番」を見つけると、なんだか宝探しに成功したような気分になりました。 「キリ番踏みました!」というBBS(掲示板)への報告。
ただそれだけのことが、見知らぬ誰かと繋がる素敵なきっかけになっていました。
2. 同盟文化
「〇〇同盟」という小さなバナーを自分のサイトに貼る。
それは自分の好きなもの、譲れない嗜好を表明する誇らしい主張でした。
同じバナーを貼っているサイト同士リンクを辿り、交流したり、仲間としての連帯感を感じる...
あの頃のネットには、SNS主流の今とは違う、手作りの温かな交流が溢れていました。
個人サイト運営者として思うこと
個人サイトが消えることは単なるデータの消失だけありません。
当時の人々の熱量や、その時代の空気感という大切な文化が失われることだと思うのです。
- 当時何が流行っていたのか
- どんな思いを抱いて取り組んでいたのか
- 写真や絵から見てとれる街や人の変化
文化的価値が非常に高いもの、それが個人サイトだと思います。
デジタルデータは手触りもないまま、すぐに消えてしまうもの。
文化がなかったことになるのは、とても問題なことではないでしょうか。
アーカイブサービスを利用したり、
時にはバックアップを自分自身で取ったりしながら、
あえて残そうとしていくことがまずできることなのかな、とも思います。
そして今後もこうしたウェブサイトを文化として永続的に守ってくれる団体や仕組みが、もっと当たり前になってくれることを願っています。

いつかこの「ネコノハコ」が、国立国会図書館のアーカイブ(WARP)に並ぶような、
時代を物語る価値のある一箱になればと願っています。
10年後、20年後の誰かがこの箱を開けたとき、かつての文化のひとかけらがそこに息づいていることを信じて、今日も更新を続けます。


